本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
真剣交際だったからこそプロポーズに大喜びしたし、守也と過ごす時間を大切にしてきたつもりだ。

しかしまだショックのさなかにいるため反論できず、真琴はぼんやりした目にふたりを映すだけである。

泣いていないと聞いて顔を上げた守也は、ホッと表情を緩めた。

「マコちゃんが強い人でよかった」

(強い? 背が高くて女らしさに欠けるから? それとも、いつも重たいフードテナーひとりで運んでいるから? 守也くん、私は平気で婚約解消を受け入れられるほど強くないよ)

三年も付き合ったのに理解してもらえないこともショックで、真琴はうつむいた。

「すごく、悲しい」

やっとそれだけを口にしたら、急に涙があふれて頬を伝った。

「そうだよね、無神経なこと言ってごめん......」

つらそうな声で守也は謝ってくれたが、愛華には強い口調で責められる。

「泣いて引き留めようという魂胆ですか? 卑怯ですよ」

「私から婚約者を奪ったあなたがそれを言うんですか?」

「人を好きになる心は自由です。それに奪おうとしたわけじゃなく、この恋を終わらせようとして、ダメもとで告白したんですから私は悪くありません」
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