本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「愛華ちゃん、指輪はいいんだよ。マコちゃんに慰謝料代わりに受け取ってほしいから」

「駄目です。私の彼氏が贈った指輪を他の女性がつけるのは許せません。守也さんは私に悲しい思いをさせるんですか?」

「い、いや、そんなつもりはないけど......」

唸り声を漏らした守也がおそるおそる、懇願するような視線を向けてきた。

(守也くんが困っている。返さないと)

そう思う一方で、困ればいいという黒い気持ちも芽生えた。

告白されたのは最近とはいえ、愛華のことは前から気に入っていたはずだ。

他の女性に惹かれている時にプロポーズをしないでほしかった。

別れるという結末は同じでも、婚約前だったなら傷は今ほど深くなかったように思う。

(うちの両親も喜んでいたのに悲しませてしまう。悔しい......)

婚約指輪の返却を拒否してふたりの間に波風を立たせてやろうかと思ったが、仕返しをしても自分の心の醜さに余計に悲しくなりそうな気がした。

真琴は子供の頃から優しく気遣いができると周囲から評価されてきた。

学校を休んだ級友にプリントを届けるのはいつも真琴の役目で、友達に頼まれて掃除当番を代わってあげたことは数知れず。
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