本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
(周囲を気にしている余裕がなかったけど、この店はテーブル間の距離が近いから他のお客さんたちにも会話が丸聞こえだ。恥ずかしすぎる)

顔を熱くした真琴は、穴があったら入りたい気分で首をすくめた。

守也と愛華も突然現れた同じ職場の医師に驚き、声も出せずにいるようだ。

修平はフラれた真琴を気遣って優しい言葉でもかけてあげようかと思ったのかもしれないが、知らないふりをしてくれた方がよかったと真琴は目を泳がせた。

なぜか真琴の左手を離さない修平が、淡白な口調で言い放つ。

「婚約解消されてよかったな」

「えっ......」

目を見開いた真琴は、信じられない思いで修平を見上げた。

迷惑な絡み方をする客だとは常々感じていたけれど、こんなに嫌味な言い方をする人だとは思っていなかったのだ。

外科医なのに心の傷口をえぐる気なのかとムッとした。

「ずいぶんとひどいことを言いますね」

「ひどいか? 責任感のかけらもなく、すぐに流されるいい加減な男と人生をともにしないでよかったんじゃないかと思ったから言ったんだ。気に障ったのなら謝る」
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