本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
それを聞いた守也は叱られた子供のように体を縮こまらせていて、愛華は髪をいじりつつ不満そうな目で修平を見ていた。

「そういう意味ですか。勘違いしてすみません」

すぐに謝った真琴だが、またしても心無い言葉をかけられる。

「婚約指輪、早く返したら?」

(返すつもりだけど簡単に言わないで。話しかけてきたのは、やっぱり意地悪をしたかったから?)

十日前の訪問販売時に言われたことも思い出し、いつもの真琴らしくない険のある答え方になる。

「そうですね。私にダイヤは似合わないと先生は仰っていましたよね」

修平の手を振り払った真琴は、返しがたかった婚約指輪を怒りに任せて外し、テーブルの中央に置いた。

「小粒ダイヤが似合わないと言ったんだ。俺が君に似合う、もっと大きなカラットの価値ある婚約指輪を買ってやる」

「え?」

言われた意味をすぐに飲み込めずポカンとしてしまったが、代わりに愛華が焦ったように聞き返す。

「生嶋先生、それってマコさんへのプロポーズですか? 冗談ですよね?」

「俺には冗談を言えるような器用さはない」

表情を変えないまま冷たい声で答えた修平に愛華は目を見開き、キッと嫉妬のこもる視線を真琴にぶつけてきた。
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