本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
嬉しくなってお礼を言ったが、真琴のコンプレックスを知らない彼は怪訝そうに首を傾げただけだった。

それからは歩調に気をつけてくれる修平と並んで十分ほど歩き、遊歩道のように細長く伸びる緑地に入る。

ここは近隣住民に神社公園と呼ばれている。

その昔、この辺りに川の神を祀った神社があったそうでこの公園は参道だった。

今は川も神社もなく、木々に囲まれた煉瓦敷きの道は散歩やジョギングをする人が多い。

夜空に星が瞬くこの時間、人通りはまばらで、静けさの中をゆっくりと歩きながら真琴はやっと悲しみに浸ることができた。

(三年も付き合って結婚する流れだったのに、まさかこんな捨てられ方をするなんて。九波さんは可愛いけど、守也くんに限って見た目で女性を選ぶとは思わなかった。いや、見た目だけじゃないか)

愛華とまともに会話したのは今日が初めてだが、甘え上手な印象を受けた。

負担をかけまいと頑張ってしまう真琴より、すねたりわがままを言ったりする愛華の方が可愛いと守也は感じたのだろう。

仕方ないと割り切るしかないが、本気で恋していた分、しばらくはひきずりそうだ。
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