本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
真琴が足元に向けてため息をつくと、「大丈夫か?」と修平が心配してくれた。

「はい、なんとか。偶然とはいえ、お見苦しいところを見せてしまいました。あの店にはよく通っているんですか?」

「たまに」

修平は駅近くのマンションでひとり暮らしをしており、自炊はしないらしい。

勤務後はコンビニで弁当を買って帰るか、飲食店に立ち寄ると教えてくれた。

「お食事中にすみませんでした。気づかないふりをしてくださってもよかったんですよ。でも、助かりました。先生が現れて、守也くんと九波さんは驚いていましたよね。焦っている感じもありましたし、それを見ていたら惨めな気持ちを紛らわせることができました。私を助けるためにあんな嘘までついてくださって、ご迷惑をおかけしました」

修平が足を止めたので、真琴は顔を上げて隣を見た。

外灯に照らされた端整な顔は陰影が際立って、いつも以上に精悍に見えた。

黄色い光を映した瞳は男の色香を漂わせ、思わず真琴の鼓動が跳ねる。

修平がむごんになったので気に障ることを言ってしまったかと動揺したら、数秒してやっと彼が口を開いた。

「嘘ではない。俺は君と結婚したい」
< 48 / 211 >

この作品をシェア

pagetop