本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「きれいごとはいらない。思っていることを正直に話して」

「本当は......すごく悔しいです。九波さんは、私からなら簡単に守也くんを奪えると思ったのかもしれません。女性として見劣りするのはわかっていますけど、すごく腹が立って、見返してやりたい......」

真琴が唇を噛みしめると、彼の口角がほんのわずかに上がった気がした。

「やっと本音を言ったな。それでいい。怒って当然だろう。我慢せずに悔しさをすべて吐き出せ」

後頭部と背に修平の手が回され、強く引き寄せられた。

「あっ......」

こちらの気持ちはお構いなしの強引な抱擁にまた驚いたが、不思議と少しも嫌だと感じなかった。

(この人は私の味方なんだ)

伝わるぬくもりからそれを感じ取ったらホッとして、こらえていた涙が堰を切ったようにあふれだした。

公園を通る人がいなかったのは幸いで、子供のように声をあげて十数分泣き続け、涙が枯れた後には悔しさが和らいだような気がした。

「泣かせてくださってありがとうございま......わっ、すみません!」
< 51 / 211 >

この作品をシェア

pagetop