本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
腕を組んで偉そうな態度だが、よほど真琴と結婚したいのか結婚生活の終わり方まで保障された。

これまで波風の少ない平穏な人生を送ってきた真琴が、今日は奈落の底に落とされたかと思ったら予想外の人物に助けられ、今はワクワクと子供のような好奇心が膨らんでいる。

普段の真琴なら熟考する時間を求めるところ、直感を信じてみたくなった。

(冒険してみよう。こういう結婚もアリでしょ。意外といい夫婦になれたりして)

「わかりました。結婚します。生嶋先生も私との生活が嫌になったら言ってください。離婚に同意しますので。言い出したのは自分だからと遠慮しないでくださいね」

「君に遠慮したことはない。たぶん今後もない」

「そうでした。先生は私に専用弁当を作らせる人でした」

真琴がプッと吹き出しても修平は笑わない......と思ったが、よく見れば口角がわずかに上がっているので機嫌がよさそうだ。

「そこに自販機がある」

修平に言われて先を見ると、桜並木の終わりに飲み物の自動販売機とベンチがあった。

彼が缶コーヒーを二本買ってくれて並んでベンチに座る。

プルタブを開けた真琴のコーヒーに修平が自分の缶をコンとぶつけた。
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