本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「俺たちの門出に乾杯」

フッと柔らかな笑みが修平の口元にこぼれた。

出会ったのは二年ほど前だが、初めて笑顔を見た気がする。

貴重なものが見られた喜びを感じると、心が前向きに動き出した。

「缶コーヒーの乾杯、いいですね。本当に今、すごく気分がいい......」

高層マンションに切り取られた夜空には黄色い半月が浮かび、桜はハラハラと真琴の髪や修平の肩に祝いの花びらを降らせてくれる。

婚約者に捨てられた悲しみはもちろん消えていないけれど、真琴の胸は修平との新生活への期待に静かに高鳴っていた。


< 58 / 211 >

この作品をシェア

pagetop