本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
平日の今日、真琴のシフトは休みで、食材の入った買い物袋を両手に下げ、日用品を詰めたリュックサックを背負っていた。

ひとりではなく隣には兄がいて、手伝うと言って仕事を抜けてついてきたのだ。

衣類の入った段ボールを持ってくれて助かるが、きっと仕事をさぼりたかったのだろう。

「生嶋様、お帰りなさいませ」

カウンターからコンシェルジュの女性に声をかけられ、真琴は緊張して背筋を伸ばす。

「た、ただいまです」

「お荷物運びのお手伝いをいたしましょうか?」

「いえ、兄が手伝ってくれますので大丈夫です。ありがとうございます」

セレブ扱いに慣れていないのでぎこちなく笑みを返し、そそくさとエレベーターに乗り込んで十八階へ。

静かな通路を進んで最奥のドアの鍵を開けた。

「スゲー......」

マンションのエントランスを潜ってから、兄はそれしか口にしない。

真琴も初めてここを訪れた時には似たようなものだったので、苦笑しながら頷いた。

アロマのいい香りが漂う広い玄関は観葉植物がライトアップされ、お洒落な陶器や風景画が飾られている。
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