本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
渋々といった態度で帰ろうとする兄を玄関まで見送る。

白大理石の玄関フロアに似合わない安物のスニーカーを履いた兄が、振り向いて真琴に真顔を向けた。

「嫌になったら帰ってきていいんだぞ。お前は自分に自信を持て。マコならもっといい男を捕まえられる。俺みたいな男が、きっとどこかにいるはずだ」

「お兄ちゃん......」

言葉が続かない真琴を残し、兄は気取った足取りで玄関を出ていった。

(自分のどのあたりがいい男だと思っているんだろう。仕事を真面目にやってから言ってほしい)

妹を心配する兄心に感動するより呆れてため息をついたら、ふと視線を感じて壁を見た。

そこに飾られているのは結婚写真で、色打掛姿で座る真琴の横に和装の修平が立っている。

ウェディング雑誌の表紙を飾りそうに美しく凛々しい修平に対し、真琴は自己評価として十人並みかそれ以下だ。

(自分史上一番きれいだとは思うけど、飾るほどじゃない。インテリアコーディネーターさんに写真は飾らないでと言えばよかった)

恋をして交際を経てのゴールインならば写真を見るたびに幸せな気分になれるので、飾っておこうと思うかもしれないが。
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