本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「嫌ではないです。玄関はお客さんが来たら見られやすい場所ですし、恥ずかしくて」

「そうか。なら俺の部屋に飾る」

「えっ?」

真琴にしたら飾っても仕方ないと思うような結婚写真である。

不思議に思って目を瞬かせたら、疑問を持たれること自体が解せないというように彼が首を傾げた。

「花嫁衣裳を着た君はきれいだった。写真を見るたびに幸せを思い返せるだろう」

「あの結婚式を、幸せに思っていたんですか?」

会話がかみ合わないと感じたのか、修平が眉を寄せて真琴の目をじっと覗き込んでくる。

探ろうとするような視線から逃げるように、真琴は写真を外した後の白い壁を見た。

(喜びのない形式だけの結婚式だと思っていたのは私だけだったんだ。表情に出さない人だから、てっきり先生も同じだと思ってしまった......)

『前々からお前を狙っていたんだな』

兄の言葉を思い出して、真琴の頬が熱くなる。

(見合いを断りたかったからだって言っていたもの。まさか、それはない)

心の中で否定して平静を保とうとしていたら、顔を覗き込まれた。

「どうした?」
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