本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「い、いえ、なんでもないです。写真、そこにしまったんです。先生の後ろの――」

シューズクローゼットの扉に手を伸ばしたら、手首を握られ鼓動が跳ねた。

「先生と呼ぶのはやめてくれ。俺たちは夫婦だろう」

「そう、ですね。それじゃ......修平さん?」

名前で呼ぶと急に距離が縮まった気がして顔に熱が集中した。

いい大人なのにと思いつつも、少女のように照れる気持ちを押さえられない。

心なしか修平の口角も上がっていて満足そうだ。

(いい雰囲気。こうして少しずつ近づいて、いつかは普通の夫婦になれるかも)

そう期待した矢先に――。

「真琴」

名前で呼び返されて弾んだ気分が急降下した。

あく抜きが不十分な山菜を口にしたような顔で真琴は注文をつける。

「すみませんが、マコにしてもらえますか?」

「なぜ?」

怪訝そうな修平に真琴は名前のコンプレックスについて話す。

小学生時代に男子に間違われた話も嫌々ながら打ち明けたというのに、修平はわかったと言ってくれない。

「君の名前はマコではなく、真琴だろ」

「あの、ですから――」
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