本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「〝真〟は真剣、真っすぐ。仕事中の君はまさにそういう雰囲気だ。〝琴〟には雅で柔らかく女性的な響きを感じる。女性らしくを求めるなら、なおさら〝と〟を取らない方がいいはずだが。君に似合ういい名前だと俺は感じる」

強い口調で言われたなら、他人にはわからない心の痛みなのだと壁を作ってシャットアウトしていただろう。

けれども淡白な修平の声はスッと心に入ってきて、凝り固まったコンプレックスを溶かそうとしてくる。

(不思議。修平さんに女性的ないい名前だと言われたら、そんな気がしてきた)

名前のコンプレックスが完全に解消されたとまではいかないが、少なくとも彼に真琴と呼ばれるのが嫌ではなくなった。

「真琴」

あっさりとした声質でも、頬に片手を添えられて呼ばれたらときめかずにはいられない。

いつもは冷たい印象もある切れ長な彼の目が心なしか熱をはらんで色気を醸し、真琴の鼓動がすぐに最高潮に達した。

(もしかしてキスしようとしてる? どうしよう。そういうのはもう少し心を通わせてからにしたいのに)

彼の手がひんやりして感じるのは、真琴の頬が熱いからだろう。
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