本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
対して真琴の仕事は大量の総菜調理に時間がかかるので早朝からの勤務が多く、一番早いシフトは四時半である。

そのため二十二時には寝るようにしていて修平の帰宅を待っていられない。

「なにかあったら相談して」と言い残し、香奈は弁当を手に外科外来へ戻っていった。

(香奈は修平さんのこと苦手だって言っていたものね。心配されても仕方ないか)



それから三十分ほどで訪問販売を終わらせた真琴は、病院の裏口にある業者用駐車場で台車を押していた。

花福の店名が書かれたワゴン車のバックドアを開けると、一時間足らずの駐車なのにムッとした熱気が車内からあふれでた。

夏は食品が傷まないようにするのが大変だ。

売れ残った弁当はもったいないけれど食中毒防止のために処分するしかない。

フードテナーと台車をワゴン車に積みながら、真琴は眉尻を下げた。

(訪問販売で修平さんに会うことはもうないんだ)

修平のために弁当を作って持たせているので、花福の弁当は必要ない。

そうなるとお互いの生活時間がずれているため、同じ家に暮らしているというのに会えない日もある。

(結婚前の方が会話する時間が多かった。寂しいな......)
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