本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
目下の目標は修平とコミュニケーションを取ることなのだが、簡単なようで難しい。

どうすればいいかと悩みつつバックドアを閉めて運転席側に回ったら、人が立っていたので驚いた。

「あ、九波さん......」

薄ピンク色の半袖ユニフォームを着た愛華が、不満がありそうな顔で真琴に歩み寄る。

守也と同じくらい会いたくないと思っていた相手なのでとっさに足を引いたが、サッと距離を詰められた。

「マコさん、ずるいです」

開口一番に文句を言われて二重の大きな目で睨まれ、真琴は困惑する。

それは守也が一緒にいる時には決して見せない、冷たさを感じる怒り顔だ。

「どんな卑怯な手を使って、生嶋先生と結婚したんですか?」

愛華の耳にも結婚の噂は届いたようだが、なにかを誤解をしているようなので、真琴は帰りたい気持ちを抑えて説明する。

「私から結婚を迫ったと思っているのなら、それは違います。修平さんに結婚しようと言われたので受けたんです。居酒屋を出てすぐ後のことですよ」

守也に婚約解消を告げられた和食居酒屋に、偶然にも修平が居合わせた。

彼の方から真琴に婚約指輪を買ってやると言ったのを、愛華も聞いていたはずである。
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