本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
愛華が真琴の左手を見て一層、嫌そうに眉を寄せた。

大きなダイヤがあしらわれた婚約指輪は普段使いできないので自宅に大切に保管してあり、真琴の薬指にはめられているのはシンプルなプラチナの結婚指輪だ。

しっくりと指に馴染む感じがして気に入っている。

「生嶋先生は大きなダイヤの指輪を買ってあげるような話をしていましたね。でもあれは婚約破棄されたマコさんに同情して、つい言ってしまっただけでしょう。あんなのプロポーズじゃありません。もしかしてあの発言の責任を取れと、先生に詰め寄ったんですか?」

真琴もあの時は同情からの言葉だと受け取っていたが、そのすぐ後に修平が本気だと知った。

ただしそこに愛情はなく利害が一致してのことなので、どう説明すべきか悩む。

(お見合いを断りたかったという修平さん側の事情を、勝手に話すわけにいかないし......)

「修平さんは結婚相手を探していたんです」

それだけしか教えられず、到底納得してくれないだろうと思ったのに、愛華が急に表情を明るくした。
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