本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
ふたりの会話を聞いていなくても、雰囲気から真琴が侮辱されていると察したのだろう。

愛華が慌てたように言い訳する。

「ご結婚に至った理由を聞いていただけです。守也さんと別れて間もないのに、不思議に思って当然じゃないですか」

ふんわりとした微笑み方や、首の傾げ方が可愛らしい。

きっと愛華はどういう仕草をすれば異性から好かれるのかを知っているのだろう。

けれども修平には通じないようで、声に怒りが混じる。

「それだけとは思えないが」

目の前には広い背中があり、ゆとりのあるサイズを着ていても逞しい筋肉の質感が伝わってきた。

こうして守られた経験のない真琴が鼓動を高まらせていると、修平が片足を引いて振り向き、濡れた頬を親指の腹で拭ってくれた。

「あの、これは......」

涙に気づかれた真琴は、いい大人なのにと恥ずかしくなる。

立場が悪いと察した愛華が慌てて批判する。

「泣くのは卑怯です。まるで私が悪者みたいじゃないですか。最初に侮辱されたのは私ですよ」

修平にじっと見られた真琴は首をすくめた。

「どうなんだ?」

問いかける声は優しく、愛華の言葉を鵜呑みにして責める気はない様子。
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