*塞がれた唇* ―秋―
「……モモ?」

 目の前で立ち止まったモモを見上げ、リン同様疑問を投げる凪徒。

 が、突然モモが膝を折って座り込もうとしたので、真下にあるお膳をサッと横にずらし、驚いて彼女を見下ろした。

「あっぶねっ! おいっ、どうしたんだよ? って、お前、膝、はだけてるっ」

 慌てて指摘をしても、モモは浴衣の合わせを直す様子もなく微動だにしない。

 仕方なく自分の茶羽織を脱いでモモの脚を覆ったが、その途端少女はおもむろに膝立ちをした。

「お、前……」

「え?」

 『お前』と言ったのは凪徒ではなくモモだった。

 酷く低い地獄からのような声。

 左手が凪徒の右肩を(つか)み、右手が更に上を目指して──

「お前、お仕置き。デコ出せ」

 ──ええっ!?

 聞こえたモモの台詞(セリフ)に絶句して硬直する凪徒。

 いや、其処にいる団員全員が、一気に金縛りに()っていた。


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