*塞がれた唇* ―秋―

[2] 〈N♪〉

「ココだヨー、入って入って」

 モモ達独身女性の部屋は、凪徒達独身男性の部屋の真向かいだった。

 宴会の間に整えられたのだろう、既にふっくらとした布団が敷かれている。

「……リン? モモ、大丈夫?」

 入室した途端、入口から秀成の声が呼び掛けた。

 リンは待ってましたとばかりに「ヒデナー!」とピンク色の声を上げて、戸口に駆け寄ってしまった。

「あ、おい! リン~何処に寝かせりゃいいんだよ!」

「ドコでもイイヨー、ヒデナー来たから行ってくるネ~! ナッギー、モモたんのことヨロシク!!」

「ちょっ……ったく!」

 自分はモモがこうなった原因でも理由でもないのにと、凪徒は舌打ちをしながら、一番隅の掛け布団を()いで、モモを静かに横たえた。

「おーい、モモ、大丈夫か~?」

 一応声を掛けてみるが、目を覚ます気配はない。

 ──暗くして、自分の部屋で待機するか。

 と、考えを巡らし腰を上げかけたところ、

「ん……気持ち、悪い……」

 モモがいきなり眉間に(しわ)を寄せた。


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