あの頃の私たちへ

♪ピーンポーン

平野先輩と私は渡辺さんの家に到着しインターホンを押した

「2人ともいらっしゃい！　中どうぞ」

私たちは靴を脱いで家にあがった

扉を１つあけると綺麗に整理されたリビングが

そして…

「誠！　来てくれたわよ」

男性はその声に気づきソファーから立ち上がりこちらを振り向いた

「どうも　はじめま…」

男性は言葉を詰まらせた

私はそのまま固まってしまって動けない

渡辺さんの婚約者は工藤先生だった

「誠？　どうかしたの？　まさか知り合い？」

渡辺さんは不思議そうな顔で先生を見る

「いや、なんでもない　初めまして工藤誠です」

先生はいつものように優しく微笑んだ

他人のふりをする気…？

私はどうしていいのかわからず顔を下に向けた

「初めまして渡辺さんの後輩の平野です　この子は今年入社した橘です」

平野先輩がかわりに私の紹介をしてくれた

とにかく他人のふりをしなきゃ！

「は、はじめまして　橘です　渡辺さんにはいつもお世話になっております」

私は冷静を装った

落ち着け　落ち着け

私は顔をあげ工藤先生に挨拶した

工藤先生が目の前にいる

2度と会わないはずだったのに…

なぜか神様は私たちを引き離してはくれない