双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 私の最後の問いかけに、雄吾さんは目をぱちくりとさせたのち、口角を上げてはっきりと答える。
「もちろん。それと、ふたりじゃなくて三人だ。春奈を一番に笑顔にさせることが、きっと子どもたちも笑顔になる法則だろう?」
 屈託なく笑う彼が涙で滲む。性懲りもなく私は涙腺が緩んでしまって、まともに顔を上げられない。
 数分間、涙が止まらず泣き続けた。その間、雄吾さんはなにも言わずに私を抱き寄せ、背中をさすってくれる。
 少しだけ落ち着いた私は、鼻をすすってぽつりとこぼした。
「ありがとうございます。私を......思い出してくれて。あきらめないでくれて」
 私が逆の立場だったら、どれだけ面倒で厄介な女だろうかと匙を投げそうだ。
 けれども雄吾さんは、昔から変わらず広い心で受け止めくれるから。
「忘れられるわけがない。全部、覚えてる」
 ぎゅうっと抱きしめられた後、おもむろに腕が緩む。それから、どちらからともなく視線を交わらせ、臆面もなく見つめ合った。
 雄吾さんの唇が落ちてきそうになるのを感じ、静かに瞼を伏せていく。完全に目を閉じる直前、私の唇まであと数センチのところで彼が尋ねてきた。
「春奈が独り身っていうなら、俺――キス、我慢しなくていい?」
 どこまでも相手を思って、優しい人。
 私は頬が火照るのを感じながら、小さく頷いた。
「ん、う......ン」
 顎を掬われ、急くように重ねられる。
 夜で辺りにはちょうど人がいないとはいえ、冷静な時なら軽く交わす程度のキスで終わらせていたと思う。だけど、一度触れた途端、感情があっという間に燃え上がる。
 求めて求められる、そんなキスに酔わされて、理性なんかどこかへ影を潜めてしまった。
「んんっ、ぁ......は」
 深い口づけに否応なしに声が漏れ出る。これ以上は、と思ったところで、雄吾さんがそっと唇を離した。
「春奈」
 耳もとで呼ばれて、背中がぞくっと甘く震える。力が抜け落ち、雄吾さんのたくましい胸に寄りかかった。
「ありがとう。またこの手の中に戻ってきてくれて」
 彼は大切なものをたしかめるように、私の背中に手を回して旋毛にキスを落とす。
「もうどんなことがあっても離さない」とささやいて。

 実家に到着したのは、午後十時前だった。
 雄吾さんが車に乗せてくれて、家の前まで送ってくれた。
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