双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「えっ」
「ちょ、海斗っ。その件はまだ」
「嘘だろ!? まさかまだ......」
 雄吾さんが驚く横で、私は慌てて海斗を窘める。が、もう遅い。すでに言ってしまった後だし、一言えば十わかるような雄吾さんなら私たちの反応で大体のことを察するだろう。
 私と海斗が気まずい思いで俯いていると、雄吾さんがぽつぽつと呟き始める。
「一度、〝もしかして〟とは考えたんだけど、見た感じから一歳になるかならないかだったし、計算が合わないかと」
 彼をそろりと窺えば、意表をつかれたらしく目を大きくして茫然としている。
 帰りの車内で遅かれ早かれ伝えようとは思っていた。こうなってしまった以上、わざわざ真実を伏せる必要はない。
 私は唇を引き結び、真剣な気持ちで雄吾さんと向き合った。
「あの子たちは双生児だからか、今もまだ平均よりかなり小柄ではあるけれど......昨日で一歳四か月になったの」
「......それはつまり」
 やはり雄吾さんでも相当の衝撃だったみたいで、核心に触れる部分は口にできないのだと思った。
 私はひとつ咳払いをし、動悸を落ち着けながら小さく答える。
「正真正銘、雄吾さんの子どもたち......です」
 再会した元恋人から、一歳を過ぎた子どもふたりが自分の子だと告げられたらどんな気持ちになるか。
 驚きか現実逃避か、実際はどうなのか私にはわからないから想像をするしかない。
 雄吾さんはというと、完全に静止してしまって反応が一切ない状態だ。
「ま、まあ、信じられないと言うなら今はそれでも......きゃっ」
 懸命に取り繕うや否や、海斗の前で抱きしめられる。
「ゆっ、雄吾さ」
「――ああ。この喜びをどんな言葉で表せばいいかわからない」
 彼の言葉を聞き、胸にじわりと温かいものが広がっていく。
 私は彼の匂いに包まれて、自然と両手を回して抱きしめ返していた。
 そこに、コホンと咳が聞こえたかと思えば、海斗が気を使って先に立ち去ろうと声をかけてくる。
「あー、じゃ、そういうことで。俺もそのうち東京へ行くと思うので、たまに会いましょう。義兄さん」
 私たちは慌ててパッと手を離し、元通りの距離を取った。雄吾さんは海斗を呼び止める。
「海斗くん、これまで不甲斐ない義兄で本当にすまなかった。ずっと春奈と子どもたちを支えてくれてありがとう」
< 106 / 119 >

この作品をシェア

pagetop