双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
とはいえ、それを差し引いても私の負けには変わりなかったはず。
「勝負は勝負ですね。では、私ができることをひとつどうぞ」
ため息交じりに雄吾さんへ話しかけるも、彼はビリヤード台の手球を見つめたまま動かない。よく観察すると、僅かに眉根を寄せ、難しいことでも考えているようだった。
「雄吾さん?」
おずおず名前を呼ぶと、雄吾さんはハッとしてこちらを見るなり苦笑いを浮かべた。
「あー、いや。やっぱりやめておく」
なにか気まずさでもあるのか、すぐにそっぽを向いた。そういう態度を取られるのは初めて。いろいろな表情を知りたいと思っていたけれど、これは......嫌だ。
いつもまっすぐ私を見てくれる彼に顔を背けられると、想像以上に寂しくて悲しい。
「ああ。もうこんな時間か。そろそろ帰――」
何事もなかった体で取り繕う雄吾さんを前に、私は自然と身体が動いていた。
彼の服の裾を掴み、俯いた状態で懸命に声を押し出す。
「ごめんなさい。私、このままじゃまだ帰れない」
「春奈さん......?」
彼の戸惑う声音を聞き、勇気を出して顔を上げた。
今はちゃんと私を見つめてくれている。彼の瞳に自分が映っているのを確認して、これほど胸が高鳴るなんて。
雄吾さんの双眸に意識を引かれ、周りがなにも見えなくなっていた。
「好きです」
今日一日、あれだけ言うタイミングを探り、伝えられないと焦っていた言葉がするっと口から出てくる。ずっと心にためてきた想いが一気に溢れ出した感覚に、一種の高揚感を覚えた。
だけど、雄吾さんは虚を突かれた顔をして固まっていて、居た堪れない気持ちが勝って下を向く。
彼が私を誘ってくれたのは、多少なりとも私に興味を持ってくれているからだとは思う。だからといって興味が好意に変わる確約はないし、ふたりで会う時間を重ねるにつれ、やっぱり違うなって思われることだって十分ありえる。
私はといえば雄吾さんと数回会って、すでに『いいな。素敵だな』と感じるところがたくさんあった。
トラブルに遭いそうな時には、瞬時に判断して穏便に解決してくれる聡明さと頼りがいを感じた。子どもとの交流もすごく自然で、安心感を与える柔らかな表情が魅力的。そうかと思えば、仕事の話をする際は凛々しい顔つきに変わる。
「勝負は勝負ですね。では、私ができることをひとつどうぞ」
ため息交じりに雄吾さんへ話しかけるも、彼はビリヤード台の手球を見つめたまま動かない。よく観察すると、僅かに眉根を寄せ、難しいことでも考えているようだった。
「雄吾さん?」
おずおず名前を呼ぶと、雄吾さんはハッとしてこちらを見るなり苦笑いを浮かべた。
「あー、いや。やっぱりやめておく」
なにか気まずさでもあるのか、すぐにそっぽを向いた。そういう態度を取られるのは初めて。いろいろな表情を知りたいと思っていたけれど、これは......嫌だ。
いつもまっすぐ私を見てくれる彼に顔を背けられると、想像以上に寂しくて悲しい。
「ああ。もうこんな時間か。そろそろ帰――」
何事もなかった体で取り繕う雄吾さんを前に、私は自然と身体が動いていた。
彼の服の裾を掴み、俯いた状態で懸命に声を押し出す。
「ごめんなさい。私、このままじゃまだ帰れない」
「春奈さん......?」
彼の戸惑う声音を聞き、勇気を出して顔を上げた。
今はちゃんと私を見つめてくれている。彼の瞳に自分が映っているのを確認して、これほど胸が高鳴るなんて。
雄吾さんの双眸に意識を引かれ、周りがなにも見えなくなっていた。
「好きです」
今日一日、あれだけ言うタイミングを探り、伝えられないと焦っていた言葉がするっと口から出てくる。ずっと心にためてきた想いが一気に溢れ出した感覚に、一種の高揚感を覚えた。
だけど、雄吾さんは虚を突かれた顔をして固まっていて、居た堪れない気持ちが勝って下を向く。
彼が私を誘ってくれたのは、多少なりとも私に興味を持ってくれているからだとは思う。だからといって興味が好意に変わる確約はないし、ふたりで会う時間を重ねるにつれ、やっぱり違うなって思われることだって十分ありえる。
私はといえば雄吾さんと数回会って、すでに『いいな。素敵だな』と感じるところがたくさんあった。
トラブルに遭いそうな時には、瞬時に判断して穏便に解決してくれる聡明さと頼りがいを感じた。子どもとの交流もすごく自然で、安心感を与える柔らかな表情が魅力的。そうかと思えば、仕事の話をする際は凛々しい顔つきに変わる。