双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 それらの感情が目まぐるしくエンドレスで巡っていく。自分の身体なのに、指一本でさえもうまく動かせない気がして、雄吾さんの手がなければきっと立っていられないと思う。
 雄吾さんは妖艶な笑みを浮かべ、おもむろに右手を浮かせた。たったそれだけの動作で私の心臓は簡単に跳ね上がり、短いテンポでリズムを刻む。
 なんだか見てはいけない気がして、さりげなく睫毛を伏せる。その途中、視界の隅に見えていた彼の手は、私の髪へと伸びてきた。
 しなやかな指を私の髪に潜らせ、するすると掬うように毛先へ滑り落ちていく。些細な髪の振動でさえも、敏感になっていて身体が甘く疼く。
「ああ。計画の詰めが甘かった。気持ちが通じ合った後、別れ難くなるところまで考えられなかった。うまくいくか確信はなかったし」
 雄吾さんはひとりごとみたいにそう言い、私の髪に唇を寄せてちゅっとキスをした。途端に頬も耳も全部が熱くなり、ドキドキするあまり瞳が潤んだ。
「可愛い。初めて見る表情だ」
 彼に手の甲ですりっと頬を撫でられ、膝の力が抜けそうになる。
 本当にどうしたらいいの? 自分が自分じゃないみたい。彼の声や指先だけでここまで翻弄されて。だけど、それが嫌じゃない。むしろ......。
 羞恥心と快楽の狭間で理性が揺れて、無意識に雄吾さんを見つめて縋った。
 彼は視線がぶつかるや否や、再び私をきつく抱き寄せた。刹那、低くしっとりとした声で耳朶を打つ。
「春奈さん。やっぱりさっきの勝負でのお願い、今いい?」
 ゾクゾクッと背中に電流が走った錯覚に陥った。甘い痺れに声も出せず、私は頷くだけ。
 すると、雄吾さんが頬に手を添え、真剣な両眼で顔を覗き込んできた。
「今夜、君を帰したくない」
 好きな人に情熱的に求められると、胸の奥がきゅうっと鳴って締めつけられる。
 最上階の部屋に行くまでもその後も、ずっとドキドキしすぎで苦しかった。
「ゆ、う......っン」
 同じボディーソープの香りに包まれたかと思ったら、ベッドに押し倒される。
 名前を口にする暇もないほど幾度となく唇を奪われ、熱を帯びた快感がせり上がってくる。
「そんな蕩けた目で見つめられたら......抑えられなくなる」
「ん、あぁ......っ」
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