双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
4.忘れられない時間
春奈と偶然の再会を果たして三日経った。
一昨日のことを思い出しながら車を走らせる。
昨日も仕事がなければ真っ先に春奈のもとへ行って、話の続きがしたかった。しかし、曲がりなりにも今はグループ会社をひとつ任されている身だ。業務に影響はさせられない。
建前はそうだが、内心いてもたってもいられず、昨日のうちにかなり仕事を前倒しして進めた。さらに秘書にも若干の無理を言って、週明け以降のスケジュールも調整してもらっている。
人生において仕事は大事だと思っている。働くことは生きることで、生活の基盤であり社会に貢献もできるものだ、と。
だけど今回だけは......今ばかりは彼女との時間を優先する。できる限り集中して、もう一度彼女と歩み寄りたい。
こんなにも執着するのは、もともと彼女への気持ちが深かったのもあるが、おそらく別れが不完全燃焼だったのだろう。
あの時、強がってあっさり受け入れてしまったから。
もちろん、当時簡単に受け入れられたわけじゃない。別れを切り出す彼女を問いただしたかったし、繋ぎ止めたかった。しかし、なにひとつできなかった。
彼女の目が僕の知るそれと違っていて、まるでこれまでの過去もすべて拒否するようなもので――。
過去を思い返し、一瞬、心臓が恐怖で震えた。
もう一度あの目を向けられたら、僕は耐えきれるだろうか。
フロントガラスの向こう側を見つめ、ハンドルをグッと握る。
結果がどうなるかは今は突き詰めて考えなくていい。とにかく、この機を無駄にしないために感情任せになると決めたんだ。
神奈川までやってきたのはいいものの、彼女の家はおろか、勤め先すら知らない。