双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 手段を択ばなければ調べられないことはないが、さすがにそうしてしまうと完全に彼女の心が離れる気がして選択肢にはあがらなかった。
 可能性のある場所といえば、初めに見かけたカフェと彼女の子どもが通う保育園。
 会える確率が高いのは、当然後者だ。
 僕は目的地から近いパーキングに車を止め、徒歩で移動をしながら考える。
 こう連日保育園のそばをうろうろしていたら不審者みたいだし、あまり続ければ春奈に迷惑がかかる。できれば今日は、彼女の連絡先を聞きたい。
 足を止めてポケットからスマートフォンを取り出す。
 連絡先の中には、今もあの頃のまま春奈の番号が残っている。女々しいのはわかっているが、自ら消す決断を下せないまま今日まできた。
 別れた後に一度だけ、酒に酔った勢いでこの番号に発信したことがある。彼女と別れて約一年経った頃だ。すると、すでに他人の回線になっていたようで、僕は謝ってすぐに通話を切った。直後、絶望した。
 春奈はいつの間にか勤めていた会社を辞め、アパートも引っ越して行方がわからなくなっていた。それでも心のどこかで、連絡を取ろうと思えば取れると甘い考えを持っていたから。
 彼女との繋がりが完全に断たれていたとわかり、人生で一番落ち込んでいたのだ。
 僕はスマートフォンを再びポケットにしまう。だけど、考え事をしていてそのまま動かなかった。
 昨日連れていた女の子は、本当に彼女の子なのだろうか。
 春奈本人の受け答えは、実の子どもだといったものだったけれど、こちらから指摘した通り、持ち物の記名は『古関』だった。
 この場合、考えられる可能性はいくつかある。
 ひとつは彼女の言う通り、本当に春奈の子どもで、なにかしらの理由があって相手と籍を入れずに生活しているもの。
 もうひとつは、本当は彼女の子ではなく親戚にあたる子どもかもしれないというもの。
 最後のひとつは......僕との――。
 口元を右手で押さえ、心の中で呟いていたその先の言葉を押しとどめた。
 仮に僕との子どもだったとして、ざっと逆算すると子どもは一歳半にならないくらいか。
 普段、あまり小さい子どもの月齢を意識していなかったから詳しくはない。でも、二カ月前に一歳を迎えた姪っ子がひとりいる。その姪っ子と同じくらいだった。つまり、一歳になるかならないかくらいじゃないんだろうか。
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