双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
いっそう現実に引き戻された僕は、ベンチから立ち上がり駐車場へ踵を返す。トレンチコートのポケットに手を突っ込み無心で足を進めていたら、前方をカップルが歩いていて歩調を緩めた。
人の幸せまで羨むようになったら重症だ。
ひとり密かに嘲笑し、前にいるふたりを追い越そうとした時、女性の声が耳朶に触れる。
「海斗の手、あったかーい」
『カイト』という名前は記憶に新しい。
それでも偶然同じ名前だったのかとも一瞬頭を過ったが、女性へ返答する男の声を聞いて思い違いではないと確信する。
「マリは足までいつも冷えてるもんな。冬は俺なしじゃ寝れないんじゃない?」
まぎれもなく、春奈の夫の〝古関海斗〟だ。
女性は古関海斗の腕に絡みつきながら、はにかみながら言う。
「ふふ。いい湯たんぽだよねえ。今度一緒に暮らすようになったら、冬は毎晩熟睡かも。助かる~」
「俺はいいけど、ちゃんと体質改善したほうがいいんじゃないの?」
「海斗はそういうとこ真面目だね。子どものお世話手伝い初めてから、ますます私の体調とかそういうの気にかけるようになったよね。ありがたいけど」
「あー。家に妊娠中、冷え性で大変そうな人がいたから余計......に」
そこまで聞いて、いてもたってもいられず古関海斗の肩を掴んだ。当然彼は驚倒し、目を大きく見開いて俺を見た。
「あ、あんた」
「どうして! 春奈がいるのにお前は......っ」
肩の次は流れるように胸ぐらを掴みかかる。完全に頭に血がのぼっている俺は、周囲も気にせず彼しか視界には入っていなかった。
「絶対に許さない」
怒りがふつふつと込み上げてくる。奥歯を強く噛みしめて、古関海斗を睨みつけた。
春奈がいるのに。あんなに頑張り屋で素直で健気で......魅力的な相手がいてもなお、この男はこうして外にほかの女性と親しげに。しかも、会話の内容からあたかも春奈を捨てることを前提として笑っていた。
俺は血管が浮き出るほど手に力を入れて、彼の上着に皺を作って締め上げる。だが、古関海斗は初めこそ動揺していたものの、今ではすっかり冷静さを取り戻していた。連れの女性に車のキーを渡し、「心配ないから先に車に戻ってて」と笑顔で送り出す始末だ。
余裕のある態度に、こちらはさらに腸が煮えくり返る。女性が立ち去るや否や、顔を近づけて低い声を漏らした。
「お前、どういうつもりだ」
人の幸せまで羨むようになったら重症だ。
ひとり密かに嘲笑し、前にいるふたりを追い越そうとした時、女性の声が耳朶に触れる。
「海斗の手、あったかーい」
『カイト』という名前は記憶に新しい。
それでも偶然同じ名前だったのかとも一瞬頭を過ったが、女性へ返答する男の声を聞いて思い違いではないと確信する。
「マリは足までいつも冷えてるもんな。冬は俺なしじゃ寝れないんじゃない?」
まぎれもなく、春奈の夫の〝古関海斗〟だ。
女性は古関海斗の腕に絡みつきながら、はにかみながら言う。
「ふふ。いい湯たんぽだよねえ。今度一緒に暮らすようになったら、冬は毎晩熟睡かも。助かる~」
「俺はいいけど、ちゃんと体質改善したほうがいいんじゃないの?」
「海斗はそういうとこ真面目だね。子どものお世話手伝い初めてから、ますます私の体調とかそういうの気にかけるようになったよね。ありがたいけど」
「あー。家に妊娠中、冷え性で大変そうな人がいたから余計......に」
そこまで聞いて、いてもたってもいられず古関海斗の肩を掴んだ。当然彼は驚倒し、目を大きく見開いて俺を見た。
「あ、あんた」
「どうして! 春奈がいるのにお前は......っ」
肩の次は流れるように胸ぐらを掴みかかる。完全に頭に血がのぼっている俺は、周囲も気にせず彼しか視界には入っていなかった。
「絶対に許さない」
怒りがふつふつと込み上げてくる。奥歯を強く噛みしめて、古関海斗を睨みつけた。
春奈がいるのに。あんなに頑張り屋で素直で健気で......魅力的な相手がいてもなお、この男はこうして外にほかの女性と親しげに。しかも、会話の内容からあたかも春奈を捨てることを前提として笑っていた。
俺は血管が浮き出るほど手に力を入れて、彼の上着に皺を作って締め上げる。だが、古関海斗は初めこそ動揺していたものの、今ではすっかり冷静さを取り戻していた。連れの女性に車のキーを渡し、「心配ないから先に車に戻ってて」と笑顔で送り出す始末だ。
余裕のある態度に、こちらはさらに腸が煮えくり返る。女性が立ち去るや否や、顔を近づけて低い声を漏らした。
「お前、どういうつもりだ」