監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時
楓が唇を震わせながら訊ねると、ソラが「ごめんなさい」と言って頭を下げる。アイビーが申し訳なさそうに全員を見つめた。

「この魔法使いは、今まで僕たちが相手をしてきた妖魔たちとは比べ物にならないくらい危険なんだ。だから、君たちではなくもっと戦闘経験のある別の魔法使いたちに対応は任されていた。……だけど」

アイビーの表情が一気に暗くなる。その唇から語られたのは、ロイドを追跡していた魔法使いたちが全員殺されてしまったのだというあまりにも悲惨な内容だった。

「酷い……」

紫月が拳を握り締める。冬都も心の内に湧き上がる感情があった。この魔法使いを野放しにすれば、最悪な未来しかないに決まっている。

「この悪い魔法使いをみんなで止めなきゃ!」

大智がそう言い、拳を握り締める。全員が真面目な顔を見せて頷いたその時、ピコンと部屋に音が響いた。

「ごめん。私のスマホの通知音だ」

楓がローブのポケットからスマホを取り出す。ファン登録をしている配信者が配信を始めたようで、その通知が届いていた。楓はスマホの電源を切ろうとするが、アイビーが止める。
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