監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時
「そうだったんですね」

蘭はそう返し、顎に手を当てて英介の遺体を頭の中に浮かべる。英介の体には、死因に繋がるようなものは何もなかった。アザの解析は最後の砦だったのだが、それも打ち砕かれてしまうともう答えはどれだけ考えても出てこない。だが、それでも諦められないのだ。

「蘭、ずっと考えてるの?死因を」

星夜に肩を優しく触れられ、蘭は「はい」と言い頷く。ここ数日、ずっと蘭の心はモヤモヤとした気持ちでいっぱいだった。

「ここ数日不審死が相次いでいますし、一体何故このような事態が起こっているのか、とても気になります。そして、ご遺族の気持ちを考えたらーーー」

蘭の表情は暗くなっていく。突然、大切な家族や友人、愛する人が命を失い、死因を知りたくても「わからない」と言われてしまえば、遺族はどのような思いを抱えて生きていくのだろうか。

その時、蘭の手に星夜の大きな手が優しく重なる。蘭が顔を上げれば、星夜の優しげな目が視界に映る。
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