監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時
「法医学の、希望に」

そう呟く蘭の表情は優しげな笑みを浮かべている。星夜がいることが当たり前となった日常の中で、笑みが自然と浮かぶようになったのだ。

蘭が身支度を終えると同時に、部屋のドアがノックされて開く。この家の主であり、蘭と星夜を住まわせてくれている紺野碧子(こんのあおこ)が顔を覗かせる。

「蘭ちゃん、おはよう」

「碧子さん、おはようございます」

廊下からはふわりといい香りが漂ってくる。お味噌汁の匂いだ。これを作ったのはーーー。

「今日はね、星夜くんが朝ご飯を作ってくれているのよ」

蘭の顔を見て碧子がフフッと笑う。心の中を見透かされたような気がし、蘭は少し恥ずかしさを覚えながら口を開く。

「碧子さん、今日は解剖の依頼はありますか?」

「今のところはないわよ。桜木(さくらぎ)刑事が依頼してこない限り、今日は何もないわね」

「了解しました」

仕事の話をしながらリビングに入ると、朝ご飯のいい匂いが鼻腔を刺激し、ニュースの音声が耳の中に入り込む。そして、愛しい人の笑顔が見えた。
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