監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時

「マルティンの故郷のスウェーデンでは、クリスマスはどんな風に過ごすんですか？」

「俺のところか？俺のところはーーー」

マルティンが口を開いた刹那、法医学研究所の電話が鳴り響き、会話の様子を微笑ましく見守っていた碧子が電話を取る。その表情は一瞬にして真面目なものに変わった。

「……はい。はい。わかりました、すぐに向かいます」

電話を切った後、碧子は電話の主が桜木刑事であることを話す。そして、道路で遺体が発見されたことなどを告げ、監察医たちの顔は一気に仕事をする顔へと変わった。




「ーーー遺体で発見されたのは、××商事に勤めている田中英介（たなかえいすけ）さん、四十九歳。××住宅街の路上で倒れているのを近くに住んでいる主婦が発見した」

冷たい台の上に英介の遺体が寝かされると、桜木刑事が警察手帳を見ながら英介のことを話す。

「英介さんが倒れた瞬間を目撃した人はおらず、現場には彼の血痕一滴すらなかった」

「……つまり、不審死ってことだね」