あたしを歌ってよ
恋人がいる?
そんな人に、あたし、あたし……!!
ほとんどパニック状態になる。
(そうだよね?こんなにカッコいいんだもん!恋人がいないはずないじゃない)
「鞠奈ちゃん?」
「あ、あの、本当になんてお詫びしたらいいのか……!」
そう言いつつ、あたしの目には涙が溢れてきた。
だって。
告白も出来ないまま、終わるんだもん。
生まれたばかりの恋は。
朝日を見ることなく、終わってしまうんだ。
「落ち着こっか。深呼吸してみ?」
まるで小さな子どもをあやすみたいに、悠馬くんはあたしに言う。
それからあたしの背中をポンポンして。
「なんだよー、泣くなってー」
と、嬉しそうに笑った。
悪魔かもしれない。
人の気も知らないで。
(笑わないで)
悪魔みたいにキレイなその笑顔に、また恋しちゃうから。
そう思いつつも。
あたしは。
ポンポンとさすられる背中から。
どっぷりと溺れていくのを感じた。