あたしを歌ってよ
第二話 引き返せない
あれから数日が経っても。
あたしの頭の中は悠馬くんでいっぱいだった。
大好きな、聴き慣れたラブソングじゃ物足りない。
悠馬くんの、あの歌声を欲している。
推しだと思っていた俳優のドラマを観ても、ときめかなかった。
悠馬くんがいい。
その声で。
あたしを呼んでほしい。
その声で。
あたしを歌ってよ。
大学の食堂で。
南と並んで、中華そばを食べている。
「安いけど美味しいって、最高じゃんね?」
南がハフハフ言いながら、中華そばを食べている。
「うん、美味しい……」
と、一応返事するものの、あたしはどこかうわの空だった。
「でもさー、ねぎがめっちゃ入ってるじゃん?私、ねぎ苦手なんだよねー。でも美味しいし、安いし、我慢できるっていうかー」
「我慢できるよね……」
「?……鞠奈、アンタ、私の話聞いてないでしょ?」
と、南は噴き出して、あたしの隣で大笑いしている。