あたしを歌ってよ
「あっ、ごめん、本当に聞いてなかった」
「だろうね」
しばらく二人で黙って食べ続けたけれど、沈黙を破ったのは、先に食べ終わった南だった。
「私、健くんに告白する」
「……えっ、え!?南って健くんと付き合ってないの!?」
驚いた。
だって、この間あんなに仲良しだったし、あの後だって……。
「付き合ってないんだよなぁ〜、本当は告白されるの、待ってたんだ。だけどさー、健くんってそういうの、言葉にちゃんとしてくれないっていうか」
「……」
「私、都合のいいような、曖昧な存在にはなりたくないんだよね。ちゃんと恋人っていう確固たるものになりたい。だから、告白する!」
「うん」
南も自分で何度もうなずきつつ、
「それでダメだったら、きっぱり諦める!このままじゃ私、望まない関係になりそうだって、この前の夜に悟ったから!」
と、力強く言った。
「応援する」
あたしはそう言って、やっと食べ終わった中華そばの器に箸を置いた。