あたしを歌ってよ
「よし、いい事を教えてしんぜよう」
南はふざけつつ、あたしの肩を抱いて耳打ちした。
「悠馬くん、M駅前のコンビニでバイトしてるって。夕方に行くと会えるかも、よ?」
「M駅前の、コンビニ」
「そ。行ってきな。気持ち伝えなよ」
「……」
あたしは午後の授業を受けつつ、考えていた。
(告白、かぁ)
確実に振られる。
だって恋人がいるんだよ?
……ううん、恋人がもしいなかったとしても。
あたしを選んでくれるとは、限らない。
(そっか)
恋人がいようが、いまいが、結果がうまくいくことばかりじゃない。
(だったら、気持ちを伝えるくらい、許されるよね?)
この恋心を、このまま消滅させるくらいなら。
思いっきり気持ちをぶつけてから消滅させてもいいじゃん。
夕方。
M駅にやって来た。
駅前のコンビニは、すぐに見つかった。
(本当に悠馬くん、いるかな?)