あたしを歌ってよ
そう思ったら。
あたしって、浮気させてるのかなって不安になった。
(ううん、何もしてないもん)
触れたのは、肩と手。
それ以上も、以下もない。
(あたしがときめいてるだけ)
だから。
大丈夫だよね?
悠馬くんは、『恋人とはちゃんとする』って言った。
(別れるんだよね?)
もう、そこに愛情は無いのかもしれない。
あたしが関係していなくても。
別れていたかも?
「……考えるの、やめよう」
不安にときめきを持ち去られるのは、勿体ない。
今は心地良く、このキラキラ輝く気持ちに浸りたい。
翌日。
火曜日の朝。
南と大学の校内にある、掲示板を見に行く。
「あれ?なんだ、一限目の講義が休講になってる」
「本当だ。あの教授、何かあったらすぐ休講にしない?」
「何かって?」
あたしの質問に南は、
「うーん、知らないけどさ」
と、笑った。
「知らないんじゃん」
あたしも笑う。
「……いいなぁ、鞠奈」
と、南が笑顔のまま呟いた。