あたしを歌ってよ
薄暗いライブハウスから。
月が輝く夜空に連れ出してくれるみたいな。
足元の頼りなさを感じつつも、それが心地良い気持ち。
演奏が終わる。
わぁっと歓声があがって。
悠馬くん達、『ベイビー・サンデー』はステージからおりた。
「ね、悠馬くんと話す?」
南が私に耳打ちした。
「え?」
「鞠奈が気に入ったなら、協力するってこと!私、このバンド、『ベビ・サン』のドラマーの健くんと親しいんだ!健くんに頼んであげるよ」
あたしは何度もうなずいた。
「いいの?南、ありがとう!感謝する!」
「いいよー、これくらい。いつも助けてもらってるもん。授業とか、レポートとか」
南が舌を出して、「てへへ」と笑う。
今のあたしには、世界一可愛い「てへへ」に見えた。
それから。
ライブハウスから出て、むんっとした暑い夜に包まれたあたし達は。
ライブハウスの隣。
『カクテル・バー レオン』と書かれたお店に入った。
入店したと思ったら南が手を振って、あるテーブルに近寄って行く。