あたしを歌ってよ

「隠さなくてもいいのに」

「隠します……っ、恥ずかしい」

「なんで?可愛いじゃん」



悠馬くんはおでこを押さえたあたしの手に自分の手を重ねて、
「オレに会うために、一生懸命に走ってきたのかなって思ったら、嬉しい」
なんて言う。



それから、そのままあたしの手を握って、
「どこに行きたい?」
と、駅の改札に向かって歩き出した。



「悠馬くんが行きたいところが、いいです」



そう言うと悠馬くんは、
「えー、どこでもいいってこと?」
と、ちょっと意地悪な表情になって、
「オトコにそんな答え方したら、鞠奈ちゃんが困ることになるよ」
と、あたしのおでこを軽くつついた。



おでこをさすりつつ、
「だって、本当のことだから」
と呟くと、
「じゃあ、鞠奈ちゃん。オレが楽しい時間をあげる!」
と、回れ右した。



え?

電車に乗るんじゃないの?



「オレの行きたいところでいいんだよね?」



そう言って連れて来られたところは……。




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