あたしを歌ってよ
……B駅の裏側。
小さなバッティングセンターだった。
「あ、あの、あたし、バッティングとかしたことなくて!」
バットを片手にビュンビュンやって来るボールに怯えながら、あたしは悠馬くんに訴えた。
「前、見て!オレが教えてあげる」
「で、でも!……わっ!」
「こういうのって、リズムだから」
「嘘っ!やだっ!怖いっ」
悠馬くんは、
「はいっ、バットをしっかり持って!」
と、ニコニコして楽しそう。
「ボールが来るよ、はいっ、いち、にー、さんっ!」
悠馬くんのかけ声に合わせて、めちゃくちゃなフォームでバットを振ってみる。
空振り。
「鞠奈ちゃん、さんっのところで振ってみて。多分一拍くらい遅れてるから」
(そんなこと言われたってー!)
「はいっ、来るよー!いち、にー、さんっ!」
カキンっと軽い音がした。
「え、あれ?」
ボールをほんの少しだけバットの先に当てることが叶った。
「当たった!当たりました!!」