あたしを歌ってよ
「……あの、悠馬く……」
言いかけた言葉を遮るように。
悠馬くんは私を抱きしめた。
ぎゅっと、抱きしめてくれた。
(……あったかい)
あたしも悠馬くんの背中に腕を回して。
そっと抱きしめ返した。
悠馬くんがあたしの耳元で、
「好きだよ、鞠奈ちゃん」
と、囁いた。
それだけで。
足元に、季節問わず、様々な花が咲き乱れたみたいな。
優しい木漏れ日の中にいるみたいな。
浮かれて。
安心して。
だけど切ない。
恋心が、爆発した。
恋人とのことは、聞かなかった。
だって。
悠馬くんを。
信じているから。
暗い部屋の中で。
悠馬くんと向き合って。
たくさんのキスをした。
たくさんの好きを伝えた。
手を重ねて。
ぎゅっと握る。
この手を初めて見た時。
この手に触れてもいい女の子になりたいって、強く思ったことを思い出す。