あたしを歌ってよ
第二章 世界の全て
第一話 新しいもの
それから。
あたしの部屋の中には。
これまであった荷物に加えて。
悠馬くんの荷物が少しずつ増えていった。
「ねぇー、このTシャツ可愛いね。借りていい?」
あたしは悠馬くんの淡いブルーのTシャツを手に取り、本人に見せた。
これは悠馬くんのお気に入りのTシャツで、よく着ているのを知っている。
「いいよ。でも、鞠奈には大きくない?」
朝ごはんのバタートーストをかじりつつ、悠馬くんは返事をくれた。
「大丈夫!ほら、見て?可愛くない?」
あたしが着たら明らかに大きいTシャツだけど、黒いロングカーディガンと細身の黒いパンツと合わせて、悠馬くんに見えるようにくるくる回ってみせる。
「可愛い、可愛い」
悠馬くんが目を細める。
嬉しくなって、
「じゃ、借ります!」
と宣言すると、悠馬くんが手招きした。
そばまで行くと、悠馬くんがあたしに小さくキスをした。
ふんわり、バターの香りのするキス。
「!?何、何のキス!?」