あたしを歌ってよ
「健くん!」
と、南が笑顔になる。
「南ちゃん!なんだ、来てくれてたんだ」
と言った、ふわふわパーマ頭の男性が、おそらく健くん。
その健くんはあたしをチラッと見て、
「誰?友達?」
と、聞いた。
「澤原 鞠奈ちゃん。大学の友達〜!可愛いでしょー?」
と南は言って、
「鞠奈!こっち来て!!」
と、あたしを手招きする。
「こんばんは」
あたしはとりあえず、そのテーブルに近寄る。
「こんばんはー!鞠奈ちゃんも飲もうよ。南ちゃんも飲むでしょ?」
と、健くんは南を自分の横の席に座らせる。
あたしはドキドキしながら、この丸いテーブルで飲んでいる二人の顔を見た。
(悠馬くんが、いない……)
なんで?
ここにいる二人は確かに『ベイビー・サンデー』のバンドメンバーなのに。
そう思っていたら。
「あれ、なんか女の子が増えてる」
背後から、声がした。
中低音の、心地良い声。