あたしを歌ってよ
「あの、場所を変えませんか?」
あたしは彼女に提案した。
彼女は首を振って、
「……いい。もう、いいです」
と、呟いた。
それから、
「私にはそのTシャツ、貸してくれなかったの。大事だから着ないでって。……わかってた。悠馬が私のこと、もう好きじゃないって。飽きてるって」
と、涙を拭いた。
「悠馬くんが、飽きたって……」
そんな、悠馬くんだけがヒドイみたいな言い方……。
「返してほしいって言ったところで、返ってこないってわかってるんです。でも、あなたを見つけたら、気持ちがどうにもならなくて。本音をぶつけたくなったの」
「……」
美人な彼女は、
「あなたは、飽きられないようにね」
と、鼻をすすりながら言った。
「は?」
この世の終わりみたいな表情で、美人な彼女は去って行った。
(何だったの……!?)