あたしを歌ってよ
「……何?元気ない?」
と、南が心配そうな表情になる。
「ううん、大丈夫」
あたしは強がった。
でも。
本当は。
怖くて仕方がなかった。
悠馬くんに一目惚れしたファンのことを。
もしも悠馬くんが気に入ってしまったら?
(あたしだって、そうだったもん)
そこまで考えて。
あたしは首を振って、考えたことをよそへ追い出す。
部屋に帰ると。
悠馬くんの姿がなかった。
(え?なんで?)
慌てて鞄の中を探って、スマートフォンを取り出す。
(何の連絡もきてない……)
なんで?
どこに行ったの?
バンドの練習かな?
でも、それだったら前もって言ってくれるはず。
バイト?
……そうなのかな。
でも、今朝はそんなこと言ってなかった。
スマートフォンの画面に、悠馬くんの連絡先。
電話をかけたい。
確かめたい。
「……」
でも。