あたしを歌ってよ
玄関ドアの覗き穴から。
ドアの向こうを確かめる必要なんて無かった。
(あぁ、終わっちゃうんだ……?)
あたしと。
悠馬くんの世界は。
こんなにすぐ。
こんなに呆気なく。
終わっちゃうんだ?
『あなたは、飽きられないようにね』
あの、美人な彼女の言葉が脳裏に蘇る。
「やめて」
あたしは、はっきりと言った。
それから、玄関の鍵を内側から解除して。
勢いよく、玄関ドアを開けた。
「えっ、きゃっ!」
扉の向こう。
背の低い、小柄な女の子が驚いて小さな悲鳴をあげた。
あたしを見て、目を丸くしている。
「あ、あの……?」
女の子は、ショートカットにおしゃれなパーマをかけていて。
ふわふわなその頭に、妙な色気を感じた。
そのことが。
ものすごくイヤだった。
「あの、ここって、悠馬さんの部屋じゃないんですか?」
と、女の子はまだ驚いた表情をしている。