あたしを歌ってよ
第三話 ケンカ
その夜、遅い時間。
酔って寝ていた悠馬くんが、目を覚ました。
「あれ?……っ!痛たたっ!」
頭を両手でおさえている。
「大丈夫?」
と、あたしは立ち上がり、キッチンに行ってコップに水を注いだ。
それを悠馬くんに渡す。
受け取りながら悠馬くんは、
「ありがとう。鞠奈、レポートしてたの?」
と、さっきまであたしが座っていたテーブルの上にあるパソコンを横目で見る。
「うん。もう提出期限は過ぎてるんだけど、一応やっておかないと」
「え、期限過ぎてるの?」
悠馬くんは水をひとくち飲んだ。
「……今日って、練習じゃなかったっけ?」
と、あたしは話を変えた。
「え?」
「悠馬くん、バンドの練習に行くってメッセージをくれたよね?」
「うん、そうだね」
悠馬くんはだから、何?というような顔をしている。
本当なら、ここで何も聞かない、言わないほうが平和だろうな、とは思った。
……思った、けど。