あたしを歌ってよ
「……なんだよ、いちいち全部、鞠奈に報告しなくちゃいけないの?」
「は?」
「バンド練習が終わったよー、仲間と飲むことになったよー、帰りが遅くなるよーって?」
「ちょっと、待って」
「なんだよ、そういうことだろ?」
イライラし出した悠馬くんが、
「鞠奈って、オレの何?」
と、言った。
背中がゾッとした。
「何って……、こ、恋人だよ?」
必死の思いで、そう伝える。
「恋人だよね?あたし、ちゃんと、悠馬くんの……恋人なんだよね?」
涙目になる。
のどの奥が絞られるみたいに、ギュンとした痛みを感じる。
「あたしっ、あたしっ、悠馬くんのっ」
ぽたぽたと、あたしの涙が床まで落ちる。
悠馬くんは。
眉間にシワを寄せて、吐き捨てるように言った。
「最近の鞠奈は、変だよ」
「えっ?」
「恋人ってさ、もっと対等な関係なんじゃないの?」
「……っ」