あたしを歌ってよ
「鞠奈ちゃん達はもう、何か頼んだ?」
悠馬くんが席に着いて。
あたしを手招きして、隣に座らせた。
「あ、まだですけど……」
(あんまりお酒、得意じゃないんだよね……)
しかし、ここはカクテル・バー。
「もしかして、お酒に弱い?」
悠馬くんはそう言って、メニュー表を慣れた手つきで手に取り、
「ここらへんのお酒は、そんなに強くないよ」
と、教えてくれた。
「じゃあ、これにしようかな」
選んだお酒が運ばれてきた時。
悠馬くんは、
「飲めそう?」
と聞いてくれて、
「無理だったら残しちゃいな。オレが飲んであげる」
と、笑った。
その笑顔に。
その言葉に。
なんだかふわふわした気持ちになる。
酔っている弘樹くんが、
「鞠奈ちゃんも、南ちゃんも可愛いよねー」
と、突然近寄ってきた。
(あ。やだな)
って、咄嗟に思った。
弘樹くんがあたしと南の肩に触れる。