あたしを歌ってよ
第三章 あたし達の世界の歌
第一話 あたしだけの歌
……6年後。
あたしは、二十六歳になった。
高校で現代国語の先生をしている。
悠馬くんとは、あの夜以来会っていない。
出て行ったきり、そのまま。
あたしはまだ、あの部屋で暮らしていて。
時々悠馬くんを思い出してしまう。
荷物も。
ギターも。
未だにあたしの部屋に残されていて。
もしかしたら、いつか悠馬くんが取りに来るんじゃないかって。
会いに来てくれるんじゃないかって。
思っては虚しくなっている。
……そんなことあるわけないって、頭の中ではわかっているんだけど。
「澤原先生、プリント集めてきましたー」
男子生徒が国語科準備室まで持ってきてくれたプリントを受け取る。
「ありがとうございます。そこに置いておいてくれますか?」
「はーい」
男子生徒は教室から出て行こうとして、ふと、足を止めた。
「どうしましたか?」